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漫画家・鳥飼茜と考える“男性は女性にファンタジーを抱いてる?”

“モテる”“モテない”は男女にとって永遠のテーマ。たとえば、顔やスタイルが“並”でも男性からの誘いが途切れない女性がいる一方で、誰もが羨むような美貌とスタイルを持っていても、パートナーに巡り合えない女性もいます。

男女の性の違いを描いてきた漫画家・鳥飼茜さんの作品『ロマンス暴風域』は、非モテの30代男性・サトミンが真実の愛を求めて、いろんな女性の間で右往左往する姿を描いた物語。作中に登場する2人の女性・“辻ちゃん”と“なっちゃん”は対照的な存在として描かれています。

辻ちゃんはスタイル抜群のクールビューティ系の美大生。美人ですがプライドが高く、年上のサトミンに対しても強くあたる1匹狼タイプです。

一方のなっちゃんは、何をやっても続かない中途半端なぽっちゃり女子。ぷにぷにしたお腹、たれ眉毛、半開きの口と、すべてが申し訳なさそうです。

サトミンはそれぞれと体を重ねるのですが、意表を突かれるのはその後の展開。プライドが高い辻ちゃんからの「私とつきあえばいいじゃん」という申し出をサトミンは断ります。そして選んだのは、ぽっちゃり風俗嬢のなっちゃん。サトミンはなっちゃんのどこに魅力を感じたのでしょうか。ここに、“男性から女性はどう見えているか”を知るヒントが隠されているかもしれません。作者の鳥飼茜さんに話を聞いてみました。

Q:主人公のサトミンは作中で辻ちゃんとのエッチを「人生で3本指にはいるくらいやらしかった」と振り返っています。対する、なっちゃんからの誘いに対しては「あついし……」と乗り気ではありません。それでもサトミンはなっちゃんを選んだわけですが、その理由は何でしょうか。

鳥飼:実は『ロマンス暴風域』2巻を描くにあたって、「自分が男性だったら、どういう女性とエッチしたいか」を考えた時に思い浮かんだのが彼女だったんですよね。あくまでファンタジーなんですけど、体つきがふくよかで、あまり強く“我”感じさせない女の子ってエロいなあって。男性がナンパして首尾よくそのコとエッチしたとしたら、後日仲間内で「おっぱいが大きいコだったよ」って語るような。最初に性的な意味での胸に目がいく感覚です。

Q:逆説的ですがたしかに、強烈な“我”は、それが強いほど男性は引いてしまうところがあるように思います。対して、極端な言い方をすると、実際どうかは別として「なんとなく押せばヤレそう」なコの方が、一緒にいても緊張もしません。

鳥飼:編集者から聞いた話なのですが、その人の友人に、“無印最強説”が持論の男性がいるそうなんですよ。彼は噂によるとめちゃくちゃヤリまくってるらしくて、その理由が「全身無印による“没個性”」なんだとか。これって要は、ファッションを通して『自分の主張をするよりも、まずはあなたを受け入れます』という意思表示しているんじゃないかと思うんです。だから、女性も安心感を抱いて、エッチしてもいいかなって思うんじゃないかと。

Q:その編集者となっちゃんは異性から見たときに同じような存在ということですか?

鳥飼:そうかもしれません。もちろん、なっちゃんに意思や我がまったくないわけではありません。外見だけでは周囲が気づけだけ。でもそのせいで見ている側からすると、警戒心やバリアがないように勝手に感じてしまう。そんな、男性に都合のいい想像をさせるなっちゃんの無防備さが、エロスに繋がっていると思うんです。ただ彼女の場合は、誰とでも寝てしまうサセ子ではなく、男性が緊張しないですむ存在として描いています。

Q:我々は異性に対して、見た目の印象で内面を想像しているわけですが、それだけでなく“都合のいい解釈をできる相手”を探しているのかもしれませんね。そして、解釈をさせやすい人ほどモテる。

鳥飼:広く浅くの“モテ”についてはそうかもしれません。髪を巻いたり、まつげをカールしたり、派手メイクをしたり、そういう女性の中での“カワイイ”を追求すればするほど、男性が女性に抱くファンタジーからは遠ざかっていきます。すると結果として男性は萎えちゃうんですよね。

Q:2人の距離が離れている分にはそれでもいいのかもしれませんが、いざ交際や結婚になると当然、思っていたのと違う面が明らかになってしまうわけですよね。鳥飼さんは、男性から“都合のいい解釈”をされているなと感じた経験はありますか?

鳥飼:旦那や元カレとケンカしたときに感じますね。たとえば男性はよく感情でなく理論で語るというけど、口論の最中に理詰めをしていくと「もういい」って言われることがあるんです。これってある意味バカにしていると思いません? 「これ以上なにか言われてげんなりしたくない」っていう感覚こそ理論じゃなくて感情でしょう。論破してくる女よりも「わかった、ごめんなさい」っていうコを求めてるんですよ。

Q:男性は「自分より“賢い”女性とは付き合おうとしない」という指摘もよく耳にしますが、まさにその部分かもしれませんね。

鳥飼:それでラチが明かないから、「ちょっと待って。お互いの言ったことをノートに書き残していくね」って提案したら、めちゃくちゃ怒られたんですよ(笑)。挙句に「全然俺のことを分かってくれない」なんて言ってくるの。逃げたよね。分かってくれているのが前提っておかしくじゃないですか? 分からないから対話しているのにね。あ、これ今の旦那(漫画家の浅野いにお氏)との話です(笑)。

Q:ノートに記されるのは私も嫌ですね(笑)。ところで、男女の間での相手に対する温度差や、解釈と現実のギャップは、結婚したり付き合ったりする前の状態のときにも多く発生しますよね。

鳥飼:私、20代のときに50代の男性と付き合いかけたことがあって。お金持ちの男性で、話がおもしろくて、毎晩愛車のジャガーで遊びに連れて行ってくれてね。で、ある日リッツカールトンのスイートを予約してくれていて、ドア開けたらキングサイズのベッドがドカーンとあってね。そのときに初めて、「この人とはエッチできない」って思ったんですよ。どうしても無理で、ツインの部屋に変えてもらいました。

Q:それは、男性的には尽くしただろうに、生殺しというか……(笑)。

鳥飼:当時私はその瞬間まで、“娘”の立ち位置だと思ってたんですよ!エッチを求められてるだなんて本当に思ってなくて。

Q:見返りを求められるとは思わなかったんですか?

鳥飼:あの頃は「私の話が本当におもしろいに違いない」って盛大に勘違いしていました(笑)。イイ顔してヤらせそうでヤらせないなんて、今思うと“ビッチ”扱いされてもおかしくないですよね(笑)。そしておじさんはおじさんで、若くてホイホイついてくる私を“カネで釣れる女”として見ていたのかもしれません。

Q:“年上好き”を公言する女性も多いですが、これも女性が年上の男性に対して都合のいい解釈をしていることによるものですよね。

鳥飼:求めることに応じてくれるというのが一般的なイメージ。男性は男性で、“空っぽのものに何かを与えるのが男性の喜び”という通念があります。でも、これもバカにできたものではなくて、お互いにそういう社会通念のようなものに乗っかってしまった方が楽な場合もあります。例えばエッチでも、お互いに一般的に相手が期待しているであろうことに乗っかることで、興奮して気持ちよくなることもあるわけですし。

都合のいい解釈は、誤解が生むときもあれば、ときには摩擦を減らしてくれることも。異性に抱くファンタジーを具現化したのが“なっちゃん”だとすれば、それはある意味、本当にサトミンにとって理想の女性であるのかもしれません。

【プロフィール】

鳥飼茜

81年、大阪府生まれ。84年デビュー。『地獄のガールフレンド』(全3巻、KADOKAWA)、『先生の白い噓』(全8巻、講談社)を代表作にもつほか、近刊に『前略、前進の君』(小学館)、『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』(KADOKAWA)がある。漫画だけでなく、『鳥飼茜の地獄でガールズトーク』(KADOKAWA)、『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)など、文筆業も精力的にこなす。

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辻野 祐馬
ファッション美容ライター
雑誌編集者&WEBライター。ファッション、美容、恋愛などの執筆を中心に複数の女性メディアで活動。色彩検定、化粧品検定の1級を保有。カネボウメイクアップ養成講座でメイクを学ぶ。特技はパーソナルカラー分析。
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